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ハンバーグの味

前々回、前回に続いて過去の「どの娘にヤラレますか?」シリーズのリメイク版です。
今回はあ~ちゃん編です。

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最初に提案したのは僕だった。
飛び込みに始まり、地道に関係を深めてT社の課題を把握した。
T社の場合、業績アップとコスト削減にはウチのシステムがまさに最適だった。
カスタマイズもほぼ不要のため、イニシャルコストもかなり抑えられた。

ところが、もう少しで採用というタイミングでライヴァルのS社が横やりを入れてきた。
価格でかなり下をくぐってきたようだった。
結局、コンペで決めることになった。

コンペの結果は通常ならば翌日以降に通知される。
ところが、今回はコンペが終了するとその場で即座に結果が知らされた。
S社のシステムを導入すると…

あまりに早い結論。
曖昧な理由。
腑に落ちなかった。
本当の理由を知りたかった。
コンペ後に、T社の懇意にしている部長にメールを送った。

「参考までにS社の提案内容を教えてください」

1時間ほどして返信があった。
メールには今回のコンペでS社が使用したデータが添付されていた。
なんとも簡素な内容だった。
たしかに価格はウチよりも30%ほど低かった。
しかし、どう考えてもT社には使いにくいシステムだった。

(一部の間接部門だけが合理化できるシステムだな)

T社に必要なのは、部門間に横串を入れ全ての業務が営業の効率化に繋がるシステムだ。
これじゃ肝心の営業部門が一番使いにくいじゃないか!
一応カスタマイズをするようだが…

一番気になったのは、資料からは熱意がまったく感じられないことだった。
痒いところに手が届くようなカスタマイズを期待できるものではなかった。
そもそもS社の技術力は評判が良くなかった。

思わずT社の部長に電話を入れた。

「ウチが採用されなかった理由を教えてください」
「いや~私も詳しい事はわからないんだよ」
「たしかに低価格ですが、あれじゃ専用スタッフを採用しなければなりませんよ?」
「うん、そうだろうね…」
「ランニングコストが上がって、業績アップが期待できないシステムなんて!」
「私もそう思うんだが…」

ここで僕は察した。
S社は恐らく政治力を使ってきたのだろう。
接待なのか、交換条件なのか…
コンペをする前にすでにあちらの採用は決まっていたのだ。

僕は急に脱力するのを感じ、電話を切った。
うま味を専有しようとする幹部同士の繋がり。
時間を掛けない形だけの提案。
S社の担当営業マンが僕に向かって舌を出しているのを感じた。

くだらないがこういうことは時々ある。
でも、こういうことに慣れようとは思わなかった。
誠実に、クライアントにとって本当に役立つ仕事がしたかった。

帰社後、コンペに負けたことを上司に報告した。
上司も納得がいかない様子だったが仕方ない。
居心地が悪いので早々に退社した。

こんな日はあの娘の顔が見たくなる。
彼女の笑顔は太陽みたいに温かい。
気が付いたら走っていた。
そして駅前の喫茶店のドアを勢いよく開けた。

カラ~ン

「いらっしゃいま・・・あ、どうも」
「はぁ、はぁ、はぁ…ど、どうも…」
「どうしたんですか!?息を切らせて!」
「はぁ、はぁ、早くキミに会いたくて(*^^*)」
「また~!何言ってんですか~!(`▽´)ノ」
「ははは。その顔が見れてラッキー!ブレンドください」
「はい。マスター!ブレンドお願いしまーす!」

「…もうね、さんざん叩かれた挙げ句にライバル会社に持ってかれちゃってさ~」

カウンターでマスターと彼女相手に、今日のことを少しぼやいた。

「ウチの製品を導入すれば業績アップできるのに…いや、僕が何とかしたかった…」

そうぼやくと、喉の奥がチリチリ熱くなってきた。

「ちょっとトイレ」

小部屋で悔し涙を拭いて席へ戻る時、店内がずいぶん賑やかになっていることに気づいた。
この居心地のいい喫茶店は、ビジネスマンたちのオアシスなのだ。
出社前に、営業の途中で、家に帰る前に…ここへ来て気持ちを切り替える人が多い。
マスターの淹れるコーヒーの美味しさと、あ~ちゃんの笑顔。
これが揃えば、どんなに気分がへこんでいても何とかなった。

たくさんの人に愛されているのは嬉しいことだが、混んでいるとこちらも気を遣う。
忙しそうな彼女を眺めながら、タバコに火を着けてため息をついた。

「あー!ため息ついたら幸せが逃げちゃうんですよ~」
「あれ?よく見てるね!でも今日はため息くらいつかせてよ」

彼女は微笑みながら別のテーブルへ呼ばれていった。
邪魔をしないように漫画を読んでいるうちに、睡魔に襲われた。


目を覚ますともう閉店時間だった。

「え?あれ、もうこんな時間?」
「ずいぶん疲れてたんですね(*^^*)」
「あ~、ごめん!コーヒーだけでずいぶん長居しちゃったね。もう帰らなきゃ」
「あ、ちょっと待って!」
「え?」
「はい!」
「え?ハンバーグ?・・・頼んでないよ?」
「サービスです!お代はいいから食べて!(*^^*)」
「マジで(゚∀゚)!!うわ~嬉しいなぁ(*^^*)」
「どう?」
「チーズが入っててめっちゃうま!」
「あたしが作ったからお代は取れないんだぁ(^_-)」
「ええ!?これ、あ~ちゃんの手作りなの!?」
「うん、元気出してもらおうと思って…」
「僕のために?(T-T)」
「その代わり、これから私が言うことをちゃんと聞いてね」
「うん・・・」
「さっきのお客さんのことは絶対に嫌いになったらダメだよ。いつか必ず誠意が伝わるから」
「はい…」
「それと、この失敗もあなたの成長に繋がっているんだから感謝しなきゃね!」
「うん」
「無駄なことなんて一つもないんだから!」
「うん」
「いま言ったこと、このハンバーグの味と一緒に忘れないでね!」
「うわ~参った~(T-T)」
「約束ね!はい、指切り!」
「ぐはぁ!凹○ あ、じゃあさ…」
「なに?」
「この味を忘れないようにするために、またこのハンバーグ作ってよ!(o≧∀≦)o」
「どうしよっかな~(*^^*)」

その時、背後で食器の音がした。
窓際の席で僕と同じハンバーグを食べているスーツ姿の男性がいた。

「あれ?このハンバーグは僕のためだけじゃなかったのね(^^;)」
「本当はね、その倍の大きさにしようと思ってたんだけどね!ごめん!」
「あの人と半分こになっちゃったのか(笑)」
「あの人ね、今日仕事で大きな受注をしたんだって」
「へ~!それはよーござんしたね~!で、お祝いのハンバーグってか!?」
「でもね、あの人、自分のこと操り人形だって言ってた」
「操り人形?」
「今日も、ライヴァル会社の方が何倍もいい製品なのに彼が受注したんだって」
「なんだそりゃ?」
「あの人は形だけの提案をして、あとは幹部たちが裏で何かしたらしいよ」
「…」
「本当は誠意を持って、もっと真っ直ぐな仕事がしたいんだって」
「…」
「ライヴァル会社の担当営業マンは、そんな誠実で真っ直ぐな人なんだって」
「…」
「その人の事をとっても尊敬してるんだって!」

僕は席を立った。
そしてハンバーグ横取り野郎の向かいの席にどっかと座った。

「おい、お前S社だろ?T社担当の営業マンだろ!?」
「はい。あなたはNさんですよね?T社でお見かけしたことがあります」
「表へ出ようぜ」
「うわぁ!今日はすみません!僕ではどうにもならなくて(>_<)」
「いや、今から一杯やらねーかって言ってんの!受注のお祝いしようぜ!」
「え!?」
「今日は会えて嬉しいぜ!なぁ、行こうぜ!」
「はい!喜んで!」

僕の誠意は、なんとライヴァル会社の人に伝わっていたのだ(笑)
それでもいいじゃないか。
これはクライアントに伝えるよりも難しいことなんだ。

誠意は伝わる。
感謝する気持ち。
無駄なことなんて一つもない。

あ~ちゃんの言ったことが次々と繋がっていった。

今夜のことは一生忘れないだろう。
あのハンバーグの味とともに。


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この物語は作者の激しすぎる妄想です(笑)
左上の「電脳猫の作り物」にはもう少しマシな話もあります。
お好きな方はポチッとするといいかも(^^)/




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