HOME>Perfume

Three for all , All for …

順調だったゲネプロだが、終盤に差し掛かったところで一時中断を余儀なくされた。

「監督!エンジェルが作動しません!」
「まさか!あんだけ動作確認をしたのに!」

”エンジェル”というのは、特注の宙づりシステムのことである。
このシステムによって、宙づりにされた3人が、場内を縦横無尽に旋回しながら歌うのだ。
「どんなに遠い席のお客さんにも、楽しんでもらいたい・・・」
東京ドーム公演の目玉企画は、3人のそんな想いを象徴するものだった。


これまで、Perfumeのライヴでは、舞台装置の動力は手動(人力)が基本だった。
Perfumeが装置の動きに合わせるのではなく、装置がPerfumeの動きに合わせられるように・・・
スタッフのそんな配慮があったからだ。
こうしてPerfumeとスタッフは意気を合わせてステージを作り上げてきた。

しかし今回は、あまりにもスケールが大きい上に、大変な危険を伴う企画だった。
そのため、コンピュータ制御の”エンジェル”を特注し、安全性を優先した。
それなのに・・・

「動力部がまったく制御できません」
「エンジェルのリハは今日しかできないんだぞ!」
「でも、今から徹夜で修理をしても、明日の本番に間に合うかどうか・・・」
「くそ!中止するしかないのか・・・」

「なんとかなりませんか?」

騒ぎを耳にした3人から強い要望が挙がった。
「どうしても、会場のお客さん全員に楽しんでもらいたいんです!」
「この企画で、あたしたちの気持ちを伝えたいんです!」
「苦労して全国から集まってくれる皆さんに少しでもお返しをしたいんです!」
「でも、この状況じゃ・・・お手上げです。」
「手動ではできませんか?いままでみたいに」
「手動ですか!?あの高さまで一気に引き上げて、空中を旋回するんですよ!人力じゃスピードや安全性が確保できませんよ。」
もちろん、彼も何とかしたいと思っていたが、すでに自分の権限を越えている。
そう思っているところに、背後から声がした。

「やってみたらどうだ?」

大里会長だった。
「明日の公演が歴史に残るものになることを、私は知っている。彼女たちが宙を舞う姿が、私にははっきり見えているんだよ!真剣に願っても叶わないものなんて、そうはないだろ?」
この一言で、手動による”ネオ・エンジェルプロジェクト”が急遽立ち上がった。



ステージの下には、まるで精巧な機械時計のような装置が組まれた。
動力部はワイヤーリール1機あたりに30名、3機で総勢90名が担う。
ギアによって動力の量を調整し、トルクやスピードが変えられる。
3系統の操舵ブースでは、オペレーターが複数のワイヤーを”操り人形”のように操る。
監督が、この”動力”と”操舵”にタイミングよく指示を出し、彼らがそれをタイトにこなすことが必要だった。


スタッフたちは夜を徹してリハを続けた。
皆の顔に疲労感が漂ってきた頃、一度帰ったPerfumeが手作りの料理を持って陣中見舞に訪れた。
3人は、皆に深々と頭を下げた。
「あたしたちのわがままのために、本当にごめんなさい!」
汗だくのスタッフたちは、それを聞くと、一斉に笑いながら温かい拍手を贈った。
「Perfumeさんの夢は私たちの夢だから!」
「明日は任せてください!もう寝てくださいよ!」
「お客さんのことだけを考えてくださいね!」
途切れることのない温かい声援に囲まれて、3人は両手で顔を覆った。



翌朝、監督は装置を点検しながら、いまだに迷っている自分に気づいた。
このたくさんの歯車と滑車。
ここから、ワイヤーが外れたら・・・彼女たちを宙づりにしたまま、操作は不能となる。
そんなことを起こすわけにはいかない!



本番直前、ステージ袖で、彼は3人に最終確認をした。
「本当にいいんですね?一応、ステージでのパフォーマンス用の準備もしていますが・・・」
「大丈夫です!お願いします!」
「ぶっつけ本番です。とてもリスクが高いんですよ。それに・・・ものすごく怖いはずです。」
「皆さんを信じてますから!勇気を振り絞って、絶対に最高の笑顔で歌い切ってみせます!」
そう言うと3人は円陣を組んで目をつぶった。


(まるで戦場へ向かう兵士だな)

少し微笑むと、彼は自分自身にようやく踏ん切りをつけた。



公演は大興奮の内に、すでに終盤を迎えていた。
観客は、一人残らず満足の表情を浮かべている。
そして、その時はやってきた。


場内の全ての照明が落とされる。
次の曲への期待が高まり、ざわつく客席。


やがて、暗闇の中でSEVENTH HEAVENの美しいピアノのイントロが流れる。
歓声が挙がるが、Perfumeの姿はない。
スクリーンに歌詞が流れる。


「♪どれだけ キミのこと 想い続けたら」

インストゥルメンタルのSEVENTH HEAVEN。
歌詞はスクリーンに流れ続ける。


「♪やわらかい 言葉じゃなくて キミに届く」

会場は徐々に大合唱になった。

「♪・・・きっとそのまま宙へ 昇っていくの 天国へ」

ここで約10秒間の長いブレイク・・・

そして・・・

外野席最上段の目の前に、純白の衣装に包まれた3人がスポットに照らされて現れた。

「うわぁ・・・」

一斉に顔を上げる観客たち。

重力を感じさせない軽やかさで、歌い踊る3人。
自分の羽で自由に飛び回る妖精のように。
彼女たちの後を、輝く粒子たちが客席にまんべんなく降り注ぐ。
誰もが、彼女たちに微笑みかけられ、満たされていく・・・


あまりの神々しさに、場内は静まり返り、彼女たちの歌声だけが響く。
観客は溢れる涙を堪えようともせず、ただただ顔をくしゃくしゃにして泣いていた。



ステージの下では、スタッフたちが懸命に作業をしていた。
彼らにはステージの様子は見えない。
監督の指示を、機械のように忠実にこなしながら、歓声が聞こえてこないことに不安を感じていた。


(Perfumeさん!怖いと思うけど、僕たちを信じて頑張ってください・・・)

エンディングに入り、3人はゆっくりと降下を始める。
ステージに足が付く瞬間に、ステージの床が下降を始めた。
監督の粋な計らいだった。
3人はそのままステージの下へ吸い込まれ、作業をしているスタッフの目の前に降り立った。
スタッフたちは目を丸くした。

(羽?・・・)


曲が終わった。
堰を切ったように客席の大歓声が聞こえてきた。

Perfumeはその大歓声に包まれながら、スタッフたちに深々と長いお辞儀をした。
頭を上げた3人の目には涙が溢れていたが、震えながら一生懸命に笑顔を作っていた。

スタッフたちは、彼女たちの表情を見ながら、無言のまま目を細めていた。

(ああ、僕たちの夢がまたひとつ叶おうとしている・・・)


監督が声を挙げた。
「さあ、ラストスパート!夢を未来に繋げよう!」

3人は爽やかに笑うと、再び大歓声の中へ飛び込んでいった。



公演後、3機のワイヤーリールを連動させるメインシャフトに亀裂が見つかった。

その亀裂では、3人分の体重に耐えきれるはずはないのだが・・・



7h.jpg




**************************************************
※このような危険なことを期待しているわけではありませんので念のため(笑)
  Perfumeとスタッフの信頼関係をこういう形で表現しました。

この物語はフィクションであり、作者の激しい妄想です(笑)
もし、同様の物語がお好きな方は、左上の「電脳猫の作り物」のどれかをポチッとするといいかも(^^)/





関連記事

この記事のトラックバックURL

http://electrocat.blog113.fc2.com/tb.php/247-1615883d

コメント

エンジェル降臨
2回泣きそうになりました。
(ホントは泣きたいのですが、後ろに妻がいるので、(笑))

1回目は、スタッフに逆に励まされ、
>途切れることのない温かい声援に囲まれて、3人は両手で顔を覆った。
のところ。スタッフとの絆は本物だと思いますのでリアルでした。

2回目は、
>ここで約10秒間の長いブレイク・・・
の後の、エンジェル降臨です。この間合いが絶妙です!
SEVENTH HEAVENは反則でしょう~。

これに近い演出はあるかもしれませんね~。
なかったとしても、もういろいろと脳内で補完してしまうので、
本番はヤバそうです(T_T)
1日の為に
どれほどの準備をしているのだろうと、改めて気づかされました。
その1日を究極の1日にする為、今日も努力されてみえるかもしれません。
ライブはチームワークと信頼関係の結晶、メンバー、スタッフの方々みんなが「理想に近い普通」を目指すDream Fighterです。
当日はどんなステージになるんでしょう。
WOWOWでの放送も決まったようですし、映像の方についてはそちらを楽しみにしたいと思います。
てか、ライブDVD出ない方向なのかちょっと不安…

手動装置の描写がこれまたジブリ系を思い起こさせるのですが、気のせいでしょうか。
パズーの親方みたいな体格の人が舞台裏でひしめき合いながら装置動かしてる様子が思い浮かんでしまい、ちょっとコミカルです(笑)。

目がかすみます。
拝読しながら不謹慎にも、将来否応無しに訪れるであろうXデー、すなわち○○コンサートのことを思い浮かべてしまいました。
勿論それには死んでも参戦しますが、最初から最後まで涙で彼女達が見えないんだろうなあ。
ああ、考えただけでも目頭が・・・・。
3人と
スタッフのファンへの想い。
それに負けない、ファンの3人とスタッフへの想い。
それぞれが、それぞれの為に、ドームを成功させたい、
成功してほしいという願い。
electro catさん、その願いを聞いて飛んで来てくれた
のは、ティンカーベルですか?
3人は、妖精の粉をもらったんですね、きっと。
メインシャフトの亀裂を、それ以上にならないように
していたのも、金物修理の得意な、
ティンカーベルですね?
彼女なら、お手の物ですもんね。
きっとこの後、妖精の粉を浴びた大勢のファン達が、
ドーム中に舞い上がって、公演の成功を祝ったんでしょうね。
よーし!僕もその日の為に、飛びたい気持ちと信じる
心を鍛えるぞ!おー!


ダブル
本物のエンジェルが、機械のエンジェルを使ってファンのために天空を飛ぶんですね、なんというすばらしさでしょう
機械のエンジェルを操ったコビトさんたちの労をねぎらいつつ、自分は3人の本物のエンジェルに涙するんでしょうね
>ロボトリアさん
コメントありがとうございます^^

冷静に解説されるとなんか恥ずかしくなりますね^^;
実は、最初にアップした時、重要なオチを書き残しておりまして・・・
ロボトリアさんに読んでいただいた時はそれが入っていませんでしたorz

スタッフとの絆を書きたかったのですが、リアルすぎるのも何かと思い、少し現実ばなれした物語にしました。

SEVENTH HEAVENは、もうホントに好きなんですぅ(T_T)
曲はもちろんなんですが、あの曲を歌うPerfumeの神々しさがもう・・・
声援を贈る声が出なくなるのは、僕的には事実なんです(大泣)

>これに近い演出はあるかもしれませんね~。
なにかあるように思えてなりません!
なくても十分ですが・・・ドSですからねぇ・・・彼女たち(^^)/
>mtstさん
コメントありがとうございます^^

>ライブはチームワークと信頼関係の結晶、メンバー、スタッフの方々みんなが「理想に近い普通」を目指すDream Fighterです。
そうですよね~(^^)/
ライヴは、スケールの大きな”生きた作品”だと思います。
生きていますから、二度と同じことはできません。
たくさんのプロ達が、今できる最高を出し切る瞬間を、参戦する側も全力で受け止め、リアクションをしたいと思います。

>ライブDVD出ない方向なのかちょっと不安…
同感です!WOWOWと契約する気はないので(T_T)

>ジブリ系を思い起こさせるのですが、気のせいでしょうか。
もうね、ジブリ(というか宮崎さん)はドはまりなんですよ~
あの、デジアナな感じ、そして人間臭さ。
書くものにも、自然に好みが出てしまっていると思います。
でも、パズーの親方がひしめき合っていたら・・・喧嘩が絶えないからダメでしょう(笑)
>パッチンマブロさん
コメントありがとうございます^^

お久しぶりです(^^)/
○○に入るのは・・・海外?
いやいや、広島のパッチンマブロさんですから、きっと”凱旋”でしょうか。

>勿論それには死んでも参戦しますが
どうせ参戦したら死ぬんですから、参戦前に死ぬのはやめましょうよ(笑)

>ああ、考えただけでも目頭が・・・・
普通、想像の方が現実よりも上回っちゃうことが多いと思うんですが、パフュは毎回想像の遥か上をやらかしてくれますよね。
想像で泣いて、現実で泣いて、思い出して泣いて・・・
ここ数年めっぽう泣き虫になっちゃいました^^;
>yossyさん
コメントありがとうございます^^

やっぱyossyさんは鋭いですね~
この話、彼女たちは天使なんですが、実はティンカー・ベルを被らせています。
って、露骨でしたかね(;^_^A

そうです、光の粉を浴びたら、信じれば飛べるんです!
ドームでは一緒に飛びましょう!
少なくとも一緒に跳びましょうか(笑)
>北方応援隊員さん
コメントありがとうございます^^

ややこしくてすみません(笑)
ところで、スタッフさんたちはいつの間にコビトになったんでしょうか(笑)
同じ話を読んで、いろんな方向へ想像が進むのはとても面白いですが(^^)

機械に亀裂が入ってても自力で飛んじゃう本物のエンジェルが、目の前に現れたら・・・
涙を流しつつ、僕も飛べると勘違いして、フラ~っと・・・
下へ落ちていきそうですorz
ギャップ萌え
前回の残念な記事から一転、来ましたね、これぞ妄想P文学!!
そして、残念な記事からのギャップ萌え~、これが出来るのはelectrocatさんしかいない
ですよね(* ̄∇ ̄*) きっと、この記事を読んでくれたPerfumeがギャップ萌え~となるよ
うに計算し尽されたブログ記事の展開。狙ってますね、流石です。

このくだりは、フィクションであり、コメント者の激しい妄想です(笑)

というかですね、これをいきなり投下されると子供の前でうっかり泣いたりしちゃうので、
大変危険なんですよヽ(´~`;)
どうか、ハンカチ注意、と前置きしてくれたら・・・

最後の最後にまた泣いた(ノ_<。)

やべェ
いつもなさそうでありそうなリアルっぽい話
感動の涙なくしては読めません。
迂闊にも仕事中に携帯で読んでしまい・・・ひとり目をウルウルさせて
おりました(^^;
この様な危険を伴うパフォーマンスで無理は実際にはしないでしょうが
そうではない無理なことは今までのライブパフォーマンスで実際には多くあったのではないでしょうか。

3人の情熱と多くのスタッフ達の願い。
きっとドームで昇華させてくれることでしょうねv

いつも心を洗わせてくれる記事、ありがとうございますw
壮大な共同作業の上に
成り立っているんですよね。特にドームという大きな器では、相当の人数のスタッフが携わっている訳ですから。そこに注がれる準備工数というのは莫大なものになると思います。そんな人々が成功を願う気持ちがきっと当日に結実してくれることでしょう。

直角二等辺の私が見たライブではSEVENTH HEAVENの際にはホールの天井に美しい照明がまたたいていました。そこからの想像で今回のストーリーは容易に視覚化できました。私の脳内にとっても美しい光景を引き出していただきました。ありがとうございます。
>runrun1006さん
コメントありがとうございます^^

ギャップ萌え!?(笑)
またまた新しい言葉が( ̄□ ̄;)!!
素晴らしい表現力に脱帽ですm(_ _)m
期待を裏切るようですが、当bloはそのような完璧な計算で作られてません(笑)
もう、思いつくままなので(^^ゞ

僕は、書きながら子供の前で泣いてますがなにか( ̄ー+ ̄)フッ
>おとわしゅなさん
コメントありがとうございます^^

>無理なことは今までのライヴパフォーマンスで実際には多くあったのではないでしょうか。
僕もそう思います。でも、スタッフとのチームワークで乗り越えてきたのでしょうね。というか、普通なら無理なことも、このチームには無理ではないと思わせてくれます。
ただ、スケジュール的な無理は時々心配になります。東京で生番組に出て、翌日名古屋でライヴとか(笑)

いつも心洗わせてくれる記事…

心洗わせてくれるのは、あの娘たちの力です('-^*)
>ngo900jpさん
コメントありがとうございます^^

客観的に見ると、パフュのライブは手が掛からない方だと思います。バンドもいませんし。その分、彼女たちや観客に細かい配慮ができることが、あの温かさのひとつの理由のように思います。
また、定番化した作業ではなく、アートに近い感覚で創り込んでいくように感じますので、一つ一つに掛かる創作時間も普通より多いんじゃないかと…

>美しい光景
SEVENTH HEAVENを歌い踊る彼女たちには、スタッフもファンも近い幻想を抱いているのかも知れませんね(^-^)
光景が
映像の様に目に浮かびました。

特にスタッフの前に静かに舞い降りる、と言う所が(ウルウル)
その瞬間、本当に羽が生えてたんですよね!

ナチュラルPVの冒頭に舞い降りて来るかしゆかのように…
これを3人にやられちゃあ、もうひれ伏すしかありません…
>PPPHIVEさん
コメントありがとうございます^^

>その瞬間、本当に羽が生えてたんですよね!
どうもそうらしいですよ(^_-)

>ナチュラルPVの冒頭に舞い降りて来るかしゆかのように…
あ~、それを出しちゃいましたか~(>_<)
神々しいと言えばやっぱあれですよね~・・・
あのような3人が目の前に現れたら!
・・・なぜか「ごめんなさい!」って言っている自分が頭に浮かんできました(笑)

コメントする

管理者にだけ表示を許可する

 

Template Designed by めもらんだむ RSS
special thanks: Sky Ruins DW99 : aqua_3cpl Customized Version】