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社長の粋 ~世界のために~

採用試験の一次面接は惨敗だった。
発想もスキルも自信がある。
でも、面接だけはどうも苦手だ。
というより、そもそも人が苦手なのだ。

人ほどいい加減なものはない。
物事を気分で語り、声の大きな人が優位に立つ。
どんなに立派な事を言ってても、最終的には自分に甘い。
そんな理不尽で不確かなものは、信じるに値しないではないか。

今日の面接にしてもそうだ。
なぜ、私の気持ちを説明させる必要があるのだ。
そんな、いくらでもねつ造できることになぜ固執するのか。
上手に嘘をつく人を入社させたいとでも言うのか。
私は、この会社が欲しているものをいくつも持っている。
それで十分じゃないか!

藤田友美はエレベーターを降りると、受付嬢から顔を隠すようにしてエントランスを出た。
くやし涙を見られたくなかったからだ。
魅力的な会社だけど…もう来ることはないわね…

「藤田さん!」

門のところで突然名前を呼ばれてビクッとした。
声を掛けたのは守衛だった。
朝は気づかなかったが、向かい合うだけでドキドキするほどのイケメンだった。

「あ、驚かせちゃいました?朝ここに名前を書いてもらいましたから」
「え!?今日の受験者だけでも50人は記名してますよね?」
「ここを通った人の顔は、頑張って覚えるようにしているんです。
  だって、一度会ったらもう知り合いれすかや…」

ときどき噛むところがかわいい。

「はは…私は残念ながらもうこれっきりみたいです」
「本気で願えば、夢は叶うんですよ!」
「いい加減なことを言わないでください!これで失礼します!」

友美はそう叫ぶと門を飛びだし、慣れない革靴をカツカツいわせて黙々と歩いた。
50mほど歩いてから振り返ってみると、あの守衛はまだこちらに向かって敬礼をしていた。
イラッとして、つい声を荒げてしまった。

「もう、放っといてください!」

すると、守衛は爽やかな大きな声でこう答えた。

「必ずまたお会いしましょうね!」

仮面を割られたような感覚だった。
こらえていた涙が溢れてくる。
なんなの?あの人…
勇気が沸き起こってくるような、この不思議な感じはなに?
友美はそこから逃げるように走り出したが、もう遅かった。


その後、友美はこの会社の人事担当者に何通も手紙を書いた。
「面接では舞い上がってしまったが、このままでは両者にとって不毛だと思う」
「もう一度チャンスがほしい。なぜなら…」
自分の気持ちをこんなにも表現したのは生まれて初めてだった。
それは、次から次へと湧き起こる想いだった。
あの会社で働きたい!
あの温かさを感じて仕事がしたい!

本面接の朝、例の守衛は涙混じりの笑顔で迎えてくれた。
そして、エレベーターの扉が閉まるまで敬礼をしてくれた。
不思議と、落ち着いて面接に臨むことができた。

***


入社して半年が経った。
そこは予想以上に面白い会社だった。
例の守衛が実は女性だったのも驚きだったが、社長が社食の女性社員に叱られている光景は滑稽だったし、庶務の女性社員が何かしようとすると、周囲の社員が率先して手伝うため、結局彼女は何もしていないのも不思議な光景だった。
しかし、彼女たちの存在が会社を支えていることはすぐにわかった。
社員の目は生き生きとしていた。
3年前まで業績不振で倒産が噂されていた会社とはとても思えなかった。
彼女たちを中心にして、前向きで温かい不思議な”気”が社内に充満し、人間不信だった友美も、見える世界がすっかり変わってしまった。

そんなある日、友美は経営会議への出席を指示された。
役員クラスが会社の方針を決める会議になぜ新入社員の私が?
戸惑いながら末席で小さくなっていると、議長が本日の議題を伝えた。

「今日は社員の背信行為に対する議決を行ないます」

ドアが開き、3人の女性が入ってきた。
守衛の大本、食堂の西脇、そして庶務の樫野だった。
重苦しい雰囲気の中、社長が口を開いた。

「君たち、『Perfume』なんだよね?」
「バレちゃいましたか・・・」
「音楽出版社との二重社員だなんてとんでもないことだよ」
「はい・・・申し訳ありません!」

アイドルとして、泣かず飛ばずの下積みを続けていた彼女たちは、将来を担保するためにこの会社に就職した。
しかし、夢は諦め切れなかった。
考えた末、世間に素性を明かさない「覆面ユニット」としてアーティスト活動を続けてきた。
そして昨年、念願叶ってブレイクを果たしたが、会社には内緒にして仕事は続けていた。
それは、苦しい時に自分たちを支えてくれた会社に恩を感じていたからだ。
社内では、できるだけ3人で会うことも避けてきたはずなのに・・・

「去年の創業祭のとき、皆に煽られてキャンディーズを歌ったよね」
「はい」
「あの時、いったい何人が泣いていたと思う?君たち3人の輝きは隠しきれるものじゃないよ」
「そんなに前からバレてたんですか…」
「君たちのアーティストとしての力は認める。でも、君たちの背信行為に対して、
  私たちは懲戒処分を申し渡さなければならない」

友美は耳を疑った。
この社長はまったくわかっていない!
役員たちに口はないの?
友美は顔を真っ赤にさせると、立場も省みず「バンッ」と机を叩いて立ち上がった。

「社長!何を言っているんですか!」
「なんだねキミは!」
「社長だって本当はわかってるんでしょ?
  彼女たちが社員一人一人に夢を与え、励まし、勇気づけていることを!
  指示されたわけでもないのに、目立たないところから会社を支えてくれていることを!
  彼女たちは、会社のためというより、もっと大きな、世の中の幸せを願っている。
  そのために自分たちができることを、懸命に探して、実行しているんじゃないですか!
  社員の全員が彼女たちに感謝しているのがわからないんですか?
  私だって、私だって・・・」

言いながら涙でぐちゃぐちゃになっていった。
それでも言い足りず、嗚咽と戦いながら続けた。

「こう言っちゃなんですけど、この会社が持ち直したのだって・・・
  はっきり言って彼女たちのお陰じゃないんですか!?
  感謝こそすれ、懲戒処分なんて本末転倒ですよ!バッカじゃないの!」

静まり返った会議室の中に、友美の嗚咽だけが続いた。
とんでもないことをしてしまった・・・
これで私もクビだよね・・・

自分の嗚咽が落ち着いてくると、周囲から妙なうめき声が聞こえてきた。
出席している役員たちが皆、声を殺して泣いていたのだ。

社長が席を立ちながら言った。

「我が社にとって最善の決議をしてほしい。あとは議長に一任する」

社長はそういい残すと部屋を出て行ってしまった。
専務が後に続く。
二人は、部屋を出る直前にニヤッと笑ったように見えた。

***


「ああするしかなかったんだよ…」
「社長のお立場ではそうですよね」
「他の役員たちの立場でもそうだろう」
「一般社員の生の声は効果てきめんでしたね」
「あの新入社員は期待以上の仕事をしてくれたよ・・・私をバカ呼ばわりしたけどな(笑)」
「いい社員ですよ。そして、彼女が言ったことは社員の総意です」
「そうだな。私たちは、あの3人に心より感謝しているんだからな」
「このままこの会社にいて欲しいですね・・・」
「いや、もう私たちが彼女たちを独り占めしてはならないんだよ」
「でも社長、知らないふりをすることも出来たんじゃないですか?」
「実は、Perfumeは世界デビューすることが決まってるんだ」
「本当ですか!」
「ああ、ディズニー映画の世界版に楽曲が採用されたんだよ」
「すごい子たちですね・・・」
「だからこのタイミングで、覆面を外させる必要があったんだ」
「彼女たちを待っている世界中の人のために・・・」
「今度は私たちが彼女たちの夢を叶える番だよ!」

***


3日後、ひとつのニュースが世間を騒がせた。
ある中堅企業が、2年分の利益にあたる金額をアミューズに寄付したのだった。
Perfumeの世界デビュー曲となる『ポリリズム』のプロモーションに使って欲しいと・・・

その発表の前日、社長は株主に深々と頭を下げて理解を求めた。
そして社員にも頭を下げ、当面の間ボーナスの支給が無いことを謝罪した。

株主も社員も、そんな社長を誇りに思った。
温かい拍手は、いつまでも鳴り止まなかった。


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この物語はフィクションであり、作者の激しい妄想です。
ご気分を害された方がいらっしゃったら申し訳ありませんm(_ _)m
反対に、同様の物語がお好きな方は、左上の「電脳猫の作り物」をポチッとするといいかもです(^^)/



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コメント

脱帽
何でこんな妄想記事を帰宅する時間に上げるんですか!電車で泣いてるキモイオッサンになってしまったじゃないですかヽ(;▽;)ノ
エピソードの入れ方といい、意外性といい、盛り上げ方といい、そしてラストの締め方といい、いちいち感動するじゃないですか。・゜・(ノД`)・゜・。
やっぱり猫さんの妄想記事はこうじゃないとね(何故か上から)
正直、こんな記事書かれたら、悔しいです(笑)
相変わらず感動させてくれて有難うございます
(´;ω;`)
またまた
泣かせてくれますね!

初めのっちを男役にしたのかと思いましたよ(笑)
3人の人柄のよさが
にじみでてますね(T0T)

職場にPerfumeがいたら
仕事どころじゃないような気がします(笑)

毎回
守衛のところでウロウロしそうです(笑)

次回も期待してます!
ま~じか~。
野球拳の記事で油断させておいて、次にこんなの持ってくるんですか…ズルい。
electrocatさんの事ですから計算ずくなのか(笑)

面接の場面、高校で就職面接の練習した時の事を思い出しました(工業高校だったので)
長所「正直です(自分の長所なんて思いつかなかった)」短所「積極性に欠けます(ホント)」と言ったら「その短所は言うな」と言われて「自分にウソついてまで就職したないわ」って思ってました。(若い)
あまりにも素晴しいので気分を害しました(^_^)
 いつも思うのですが、この妄想が妙に「ありえる」と思えるのですよ。もちろんelectrocatさんの文才によるものも大きいのですが、三人のキャラクターが納得させるものなんですよね~
Read More 押すんじゃなかった...。
もー! 会社の昼休み、コンビニ弁当で済まそうとして何気なくクリックしたこの記事....。
さっきから大量の鼻水が止まらない! やたらと視界が悪くなって困る!!
どーすりゃあ、良いんですか。 ヤベ、ホントに泣きそうだ。

あ、今向かいの人が「お昼、行ってきまーす」って席を立ってくれた。
...アブナかったー。一人で弁当食べながらPC見て涙ぐんでるオジさん、
絶対にヘンな目で見られてたんだろなー(笑)。
お陰でぜんぜん普通の味付けの弁当を、「フエー、辛い!」とかせき込みながら食べるハメになるわ。
不思議
現実とは違う話なのにリアルなのは、この話のほうが本当っぽいからなのかな。Perfumeのリアルな話のほうが夢みたいですから(笑
毎度不思議なリアリティーは、猫さんの文章力はもちろんですけどPerfumeのキャラや気持ちまでよくわかっているから?やっぱりキモチワリュイです(笑
でもこれが癖になるんですよ(〒_〒)
>runrun1006さん
コメントありがとうございます^^

前回は「何言ってんだ」と叱り飛ばし、今回は褒め殺し…
しかも最上段からと、ゴージャスな構成でありがとうございます(笑)

>電車で泣いてるキモイオッサンになってしまったじゃないですかヽ(;▽;)ノ

そりはね、僕のせいじゃないんですよ(*´艸`)

>正直、こんな記事書かれたら、悔しいです(笑)

前から言っていますが、この「悔しい」というのがどーもわかりません(笑)
>かずきさん
コメントありがとうございます^^

>またまた泣かせてくれますね!

あれ、今回は淡々としてません?
前回が湿っぽかったですからね~(^^;)

>初めのっちを男役にしたのかと思いましたよ(笑)

のっちが男でも惚れますか?
ちょっと言ってみたかっただけです( ̄∀ ̄)

>毎回守衛のところでウロウロしそうです(笑)

僕は一日中庶務課に詰めています(笑)
あ~ちゃんに叱られたら自分の部署に戻ります。
>mtstさん
コメントありがとうございます^^

>electrocatさんの事ですから計算ずくなのか(笑)

そんな余裕ないですってば(^^;)
mtstさんはクリエイターだからわかるでしょ?

>「自分にウソついてまで就職したないわ」って思ってました。(若い)

若い!
でも、僕はそういう気持ちを忘れないようにしてます(^^)/
なんか辛い(?)ことを思い出させちゃいましたか?
>セラミックおじさん
コメントありがとうございます^^

なぜ気分を害されたのかが今一つわかりませんが(笑)
本当に文才があれば苦労はしませんよ(T_T)

Perfumeのふんどしで相撲をとる電脳猫です。
Perfumeのふんどしで(//∀//)←アホ
>チョービギナーさん
コメントありがとうございます^^

そんなだったんですか( ̄□ ̄;)!!
じゃあ、今度は「ブッ」って吹き出すような箇所を作っておきますので、向かいの席の人の顔をご飯つぶだらけにしてあげてください(笑)

>絶対にヘンな目で見られてたんだろなー(笑)。

大丈夫ですよ。
まわりはとっくに変なおじさんだと思っていますから( ̄∀ ̄)v
>ゆかにゃんさん
コメントありがとうございます^^

>Perfumeのリアルな話のほうが夢みたいですから(笑

そうですよね~
だから、どんな話にしてもリアリティがあるんじゃないでしょうか。
ただし、Perfumeらしいやりかたで…

>でもこれが癖になるんですよ(〒_〒)

ありがとうございます!
癖になっていただくのはありがたいのですが、プレッシャーはかけないでくださいね( ̄∀ ̄;)

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