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ありがとう

※この記事はフィクションですが、Perfume 3rd Tour 『JPN』 のネタバレを含みます。



ずいぶん迷ったが、結局地下鉄に乗ってしまった。
窓に映る車内の光景をぼんやりと見ていたら、あいつの顔が浮かんできた。

彼とはもう30年以上の付き合いになる。
幼少時代は、彼と共にたくさんの小さな好奇心を満たしてきたものだ。

しかし、中学校が別になったのをきっかけに、会う頻度がめっきり減っていった。
お互いに新しい友人もでき、新しい興味も増え、考え方も大人びていった。

それでも、彼は僕の中に住み着いていたし、時々、不思議なこともあった。
進路や人間関係で悩んでいる時に、彼の方から連絡が入るのだ。

「よう!元気か?」

彼のこの言葉にどれだけ救われてきたことか。

社会人になると年に一度くらいしか会えなくなった。
一年ぶりでも何の違和感もなく笑いあえる友。
こんな友人を持っていることが誇らしくさえある。


そんなことを考えているうちに目的の駅に着いた。

改札を出ると、大勢の人でごった返していた。
お揃いのジャンパーやTシャツを着た他人同士が、期待感に顔を光らせている。
彼らの行き先が僕と同じだということはすぐに判った。
僕は、内ポケットにあるチケットをもう一度確認した。

Perfume 3rd Tour『JPN』の会場前はいつもの光景だった。
数時間も前から集まり、笑顔で語りあう人々。
いつもなら微笑ましく眺めているのだが、今日に限っては眩しくてまともに見られなかった。


ライヴが始まった。
最初から惜しげもなく畳み掛けるヒットチューン。
重低音のビートが腹の奥に響く。
神々しいほどの美しさで飛び交うレーザー。
ステージにはキラキラと眩しい3人が躍動している。
熱狂する観客。
ほとばしる汗。
会場を埋め尽くす笑顔、笑顔・・・

このツアーには前にも参加しているのに、今日は前とは全く違う。
この「生きている!」という実感はなんなのだ?
次の瞬間、僕は”その反対側にあるもの”を理解した。

あいつは、もう汗をかかないのだ。


昨日届いたあの忌まわしい知らせ。
遠い場所で、大切にしていたグラスが割れたような感覚だった。

今頃は彼の通夜が営まれている。
僕は参列をせずにここへ来てしまった。

前から楽しみにしていたライヴではある。
しかし、悩んだとはいえ今日ここへ来ることにどんな意味があるのか。
自分の行動が理解できなかった。

今思うと僕はPerfumeに救いを求めていたのかも知れない。
当たり前が当たり前ではなくなる・・・
そのことにどう折り合いを着ければいいのか。
彼女たちなら何かを示してくれる気がしたのだと思う。


そしてあの曲が始まった。

ひざまずいて祈る3人。
彼女たちは、身体にまとわり付く光と戯れながら、彼女たちの祈りを託す。
光は、次第に彼女たちの祈りと願いを理解してゆく。

想うこと、忘れないこと、繋がること・・・
大切な人が、笑顔でいられるように。
Perfumeが懸命に祈っている。

涙が溢れた。
祈る気持ちとは、こんなにも美しいものなのか!
大切な人への純粋な願い。
ただそれだけなのだ。
それだけでいいのだ。

彼女たちは、あいつのために祈っているように思えた。

「いや、彼女たちはもっとたくさんの人のために祈ってるんだよ」

会場の天井いっぱいに彼の顔が広がった。

「よう!元気か?俺はお前の中にいるんだから今までと変わらないよな?」

彼はニコッと笑うと、3人が作った三角の光の中に吸い込まれていった。
三角の光は、上昇しながら徐々に小さくなってゆく。
そして一筋の強い光となり、天井を突き抜けて天に突き刺さっていった。

嗚咽が止まらなかった。
光の最後の点が消えても天井を見上げていた。
首筋まで伝たう涙が温かかった。

沸騰する客席がスローモーションに見える。


静寂な頭の中に「ありがとう」だけが何度も何度も響いていた。


**************************************************

この話は、当ブログの読者の方の実話が基になっておりますがフィクションです。
ご本人の承諾を得て書かせていただきました。
簡単なことではありませんが、その方の気持ちの整理に糸口が見つかることを祈って・・・




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コメント

無題
その方にとって、なんとも複雑な心境の一日になったでしょうねぇ・・・
でも、生きている以上辛い事に縛られて立ち止まっている訳にもいきません。
元気出して歩いていかないとね・・・(o^∇^o)ノ

「今思うと僕はPerfumeに救いを求めていたのかも知れない。」
自分も救われてます。彼女たちに・・・
>kokoronoryushiさん
コメントありがとうございます^^ 

コメントしにくい記事に反応をくださってありがとうございます(T_T)
話の基になった方が、kokoronoryushiさんのコメントを読んで元気をもらえたと喜んでおられます。
ありがとうございます!
kokoronoryushiさんの反応が、この記事を補完してあの方に届いたように思います。

>自分も救われてます。彼女たちに・・・

僕もです!
みんなそうですよね(^^)/
>非公開のコメ主さん
コメントありがとうございます^^

お友達のご冥福を心よりお祈りいたします。
そして、この話を受け入れてくださってありがとうございます。

>記事を読んだ人から元気をもらえた

このような気持ちや繋がりはPerfume界隈ならですね。
ありがたいことです。
僕が記事を書いて、kokoronoryushiさんがコメントをくださった。
この繋がりが嬉しいです。
他にも拍手をくださった方や、非公開でコメをくださった方もいらっしゃいます。
あなたのことを心配されている方、共感されている方が大勢いらっしゃるんですよ。
乗り越えられることをお祈りしております。

>Perfumeとこのブログはどんな薬より僕には効いているような気がします。

ありがとうございます。
でも、Perfumeがいなければこのブログは存在しませんので、すべてPerfumeに感謝ですね(^^)
でも
>でも、Perfumeがいなければこのブログは存在しませんので、すべてPerfumeに感謝ですね

違いますよ

猫さんがこのブログを立ち上げていなければ僕もPerfumeだけでは救われていません。

きっかけはPerfumeでもそこから広がる世界があると思います。

重ね重ね感謝いたします。
>エレ中おやじさん
コメントありがとうございます^^

>違いますよ
>猫さんがこのブログを立ち上げていなければ僕もPerfumeだけでは救われていません。

そんな…
Perfumeの良さを広められたらいいなと思いながら書いてはいますが、本当にそうなっているのか自問自答することも多いんです。
救われました(T_T)
ありがとうございますm(_ _)m
>非公開のコメ主さん
コメントありがとうございます^^

やっぱり(笑)
僕も目を疑いました(^^;)

忘れない事が一番だと思います。
そういう意味でも、良かったのだと思います。
鳥肌めっちゃたちました。
今もたってます!
そして泣きそうになりました。

ありがとうございました。

>かずきさん
コメントありがとうございます^^

かずきさんの賛同も、あの方の気持ちの整理に繋がるといいですね(^^)/

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