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父の計算尺

※今回の記事はPerfumeとは関係ありません。


先週『風立ちぬ』を観ました。
『もののけ姫』以降の宮崎駿監督作品で一番好きです。
最近の作品はテーマが大きすぎて収まりきらない感じでしたからね~
この映画は等身大で、スッキリ収まっています。

実在の人物をモデルにしたファンタジー。
一人の技術者の夢と大人の恋愛。
僕らが育った時代とは時代背景がまったく違うけどとても共感できる。

この映画を観ると、家族を大切に思えます。
隣です鼻をすすりながら観ている妻が愛おしくなる。
娘が元気でい続けるだけでいいと思える。
そして、父を思い出しました。

映画では計算尺が何度も出てきます。
職場でも、家でも、計算尺を手放さないエンジニアたち。
あの姿が、かつてとても身近なものだったことを思い出したんです。

僕の父は船を設計するエンジニアでした。
いつも計算尺を使っている姿は、映画の主人公の姿そのままでした。
計算尺は子供が見てもさっぱりわからないシロモノです。
でも、あの精密なメモリや細かい数字、滑らかに動く尺やカーソルに知的なカッコ良さを感じていました。
そして、いつかは自分もあれを使いこなすんだと憧れていました。

小学生の頃、父に計算尺の使い方を教えてもらったことがあります。
小学生にはまったく実用性がありませんでしたが。
でも、大人の世界に少し踏み込んだような気がしてとても嬉しかったのを覚えています。
父もなにか誇らしげだったように感じました。

後で知りましたが、日本製の計算尺は世界の80%ものシェアを持っていたそうです。
日本製は竹で作られていて、滑りがよく、変形しにくかったからです。
父は、世界に誇る日本製の計算尺を使って、世界と技術力を競っていたんです。

しかし、やがて日本の造船業界は衰退していきます。
船の需要が伸び悩んだことに加えて、海外のメーカーにコストで勝てなくなっていったようです。
同じころ電卓が一般化し、計算尺は世の中から消えていきました。

電卓は、正確な計算が早くできるようになった点で画期的です。
でも、なんとも味気ない。
父がその後も長い間計算尺を使っていたのにはそんな想いがあったような気がします。
技術者の魂や、誇りの代名詞。
当時のエンジニアにとって計算尺は、武士にとっての日本刀のようなものだったのかも知れません。


今では形見になっている父の計算尺を久々に引っ張り出してみました。



ksj1.jpg
ボロボロの箱



ksj2.jpg
ヘンミ計算尺No.259



ksj3.jpg
かなり汚れています



何十年も放置されている間にすっかりシミや黄ばみに覆われてしまいました。

あの頃、父はこれを使いながらどんな夢を見ていたのだろうか。
そんなことを考えながら、計算尺を磨きました。

そうすることで、父の生きざまを少しだけ感じることができるような気がしたから。





ksj4.jpg









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コメント

初めて拝見しました計算尺!
ソロバンから電卓な感覚でしたが、造船に必須な計算尺という存在が在ったのですね!
お父様の貴重な職人魂を公開していただき有り難うございます。
失礼ながら勝手にロマンです、数学苦手だけど数字と専門機器は大好き。
私も週末、観に行きますー
感覚
デジタルに無い感覚の世界。
計算という無機の世界と感覚の世界をつなげる素敵な道具。

アメリカのシェールガス開発の急激な発展に合わせて、日本の造船業も活況を呈してきています。
現在でも世界中の大型船の船首に採用されている「バルバス・バウ」
もとは戦艦大和の船首に採用されて、基本設計25ノットだった大和は27ノットの速度を得ました。
北米からガスや石油を輸入するために大型タンカーの建造ラッシュになっている現在。
乗員の少なさをカバーするハイテク操船術と、低燃費が売りの日本の造船技術。
こと大型タンカーの世界では、安ければよい時代は終わりを告げています。
お父上の計算尺も無縁ではありませんね。

形見
私も昨年父を亡くしまして、形見代わりに机にあった万年筆を勝手に頂戴して使っています。ボールペンとシャーペンばっかり使っていた手には万年筆の書き味が予想外に滑らかなのが嬉しくて、以後メモを取るのに愛用しています。何だか、父を亡くして、古臭いものに触れて、少しだけ大人になったように感じます。
良い思い出は良い人物を創る
羨ましいです ただただ羨ましいです

本当に羨ましいです 
>アシュラさん
コメントありがとうございます^^

>造船に必須な計算尺という存在が在ったのですね!

計算尺はジャンルごとにいろんなものがあったようですよ。
「風立ちぬ」の主人公は飛行機の設計屋ですから、父のとは違うと思います。

>失礼ながら勝手にロマンです、数学苦手だけど数字と専門機器は大好き。

なんとなくわかります(笑)
それに携行できるものを使って、とてつもなく複雑で大きな物を設計しちゃうっていうのもロマンですね!

>私も週末、観に行きますー

楽しんできてくださいね~(^-^)/
>スーさん
コメントありがとうございます^^

>計算という無機の世界と感覚の世界をつなげる素敵な道具。

そうですね~(*^_^*)
夢を現実にする魔法の道具とか。

>アメリカのシェールガス開発の急激な発展に合わせて、日本の造船業も活況を呈してきています。

そうなんですか!

>もとは戦艦大和の船首に採用されて・・・

宇宙戦艦ヤマトにも採用されていますね(笑)

>北米からガスや石油を輸入するために大型タンカーの建造ラッシュになっている現在。
>乗員の少なさをカバーするハイテク操船術と、低燃費が売りの日本の造船技術。
>こと大型タンカーの世界では、安ければよい時代は終わりを告げています。

へ~そうなんですね。
かつての重厚長大ではなく、軽薄短小とのイノベーション。
日本にしかできない技術で世界をリードしてほしいものです。
それにしてもスーさんお詳しいですね!

>お父上の計算尺も無縁ではありませんね。

父の夢や努力が今に繋がっているなら嬉しいことです(*^_^*)
>massasueさん
コメントありがとうございます^^

>形見代わりに机にあった万年筆を勝手に頂戴して使っています。

いつも手元に置いて使えるものはいいですね。
故人の供養には理想的だと思います。

>万年筆の書き味が予想外に滑らかなのが嬉しくて、以後メモを取るのに愛用しています。

僕も歳をとってから万年筆の良さに目覚めました。
文字を書くのが楽しくなるんですよね~(*^_^*)

>何だか、父を亡くして、古臭いものに触れて、少しだけ大人になったように感じます。

とっくに大人なのに面白いですね。
年配になって初めてサマになるアイテムも多いですから。
この先、まだまだ楽しみは多いんですよきっと(^_^)v
>セラミックおじさん
コメントありがとうございます^^

>羨ましいです ただただ羨ましいです
>本当に羨ましいです

セラミックさんにもいい思い出がたくさんおありですよね?

自分が昔の親の歳になって初めて解ることがあります。
そんなことがキッカケになって、今まで「思い出」とも思っていなかった「記憶」が急にクローズアップされることが多くなってきました。
そして今になって、いろいろ確かめたいことが増えています。
でも、それが出来ないからあれこれ想像するのも楽しいものですね(*^_^*)
>非公開のコメ主さん
コメントありがとうございます^^

ビンゴです!!
社宅の場所までご存じとはさすがです(笑)

しかもお仕事で繋がりがあったとは!
いろいろご縁がありますね~(*^_^*)

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