HOME>Perfume

Warm Blue

増井咲子はライヴハウスで照明の仕事をしていた。
箱が照明を請け負う場合はオペレーターを務める。
しかし、ほぼきっかけ合わせだけで本番を迎えるのが常だった。
いつかはきちんと仕込図を作るような仕事をしてみたい・・・
咲子はそう思っていた。

ライヴクルーが付いて回るプロの場合は、その照明チームの手伝いをする。
持ち込まれた照明機材、吊込み作業、綿密なパッチング、最新の卓、リハ・・・
それらの全てに関わりたくて、いちいち首を突っ込んでは叱られた。
叱られることで、チームワークの大切さを教えられた。
そのチームワークが感動的な世界を創り出すことを。

1994年にスピッツというバンドのライヴに何度か関わった。
メジャーデビューして3年、ようやく注目されつつあるバンドだった。
独特の世界観を持つ曲と歌声は、咲子の心に共鳴した。
しかし、彼女の心を最も捉えたのはチームの雰囲気だった
スタッフは、バンドの世界観を伝えるために全力を尽くしていた。
まるでスタッフも併せて一つのバンドのようだった。
そして、照明の美しさに引き込まれた。

ブルーの地明かりと、別のブルーやナマ(ホワイト)のスポットが織りなす奥深さ。
寒色で落ち着いているのに温かい。
スピッツの世界観と見事なシナジーを引き出している
この照明をディレクションしていたのがSWEET STUFFの梨本宏昭だった。
咲子がその会社の門を叩くのに時間は掛からなかった。

咲子は梨本を師と仰ぎいつも付いて回った。
その分飲み込みも早く、1996年にはスピッツのライティングスタッフの一員になっていた。
もちろん他のバンドや、演劇の仕事もあった。
しかしスピッツのチームは別格だった。
バンドのスタンスやビジョンを深く理解し、彼らの活動を妨げるものを排除しようとする。
観客との距離をできる限り近づけるために真剣な議論がなされる。
それでいて皆とても仲がよく、お互いを気遣うのだった。
咲子も「まっちゃん」と呼ばれ可愛いがられた。

スピッツはまもなく大ブレイクを果たした。
ライヴの規模がみるみる上がっていく。
しかし、チームの軸がぶれることはなかった。
その”地に足が着いた”仕事に十年以上関われたことは、咲子に大きな影響を及ぼした。

ある日、梨本が言った。

梨 「人間は外からの情報の80%を目から得ているんだよ」
咲 「ええ、学校で習いました。たしか耳からは15%でしたよね」
梨 「うん。じゃあ俺たちがスピッツに光を当てなかったらどうなる?」
咲 「スピッツの80%は伝わらない?」
梨 「そうはならないよね(笑)」
咲 「ならないですね(笑)」
梨 「人間は暗闇にいると音を見ようとするんだ」
咲 「はい」
梨 「その想像力が音楽を何倍も豊かにする」
咲 「そんな・・・それじゃ音楽にとって光は邪魔な存在みたいじゃないですか!」
梨 「俺たちは何に光を当てればいいんだろうね」
咲 「・・・」

固まってしまった咲子を横目に、梨本はニヤニヤしながら行ってしまった。
彼女がひとつ気付いたことは「光を当てない事も照明の仕事」だということだった。

2006年秋、咲子は梨本に呼ばれた。

梨 「このユニットの話が来てるんだけど」
咲 「Perfume・・・ですか?」
梨 「お前がディレクションしてみないか?」
咲 「え!?」
梨 「俺が関わり始めた頃のスピッツに似ているんだよ、Perfumeは・・・」
咲 「注目されつつあるってことですか?」
梨 「うん。そして彼女たちにはいいチームも出来つつある」
咲 「その一員になれと・・・私にできますか?」
梨 「俺はスピッツをお前に譲る気はないからな(笑)」
咲 「え?」
梨 「一生付き合いたいグループなんてそう会えるもんじゃない」
咲 「Perfumeは私にとってそういう存在になるというんですか」
梨 「俺はそう思う。精一杯やってみろ」
咲 「はい!ありがとうございます!」

梨本の言った通りPerfumeはブレイクを果たした。

それから7年が過ぎた2013年12月25日。
梨本は東京ドームにいた。
咲子の仕事ぶりを久々に見ようと思ったのだ。

キュートな女性3人組のダンサブルなステージなだけあって華やかな照明だった。
曲と一体となって観客のアドレナリンをダダ漏れにする。
凄まじくパワフルな空間だった。
ドームが小さく見えた。

そんなライヴのラストソングは『Dream Land』だった。
梨本は息を飲んだ。
こんなに美しく透き通った世界は見たことがなかった。

遠くから呼びかけるような歌声。
その声に光が当たっている。
観客一人一人から飛び出した想いにも光が当たっている。
光はそれらを繫げ、3人に届けられる。
広い空間が優しさで満たされていく。

ブルーとホワイトが織りなす美しい場所。
寒色なのに温かい。
それは梨本へのオマージュでもあった。

「あいつ・・・」

不覚にも涙が頬を伝った。
愛おしいような、悔しいような不思議な感覚に見舞われた。
そんな彼を大きくて温かいものが包み込んでいった、
彼は体を委ねた。

終演後もしばらく関係者席で動けないでいると、後ろから声を掛けられた。

咲 「梨本さん!」
梨 「お!まっちゃん、よかったぜ!」
咲 「来てくださってありがとうございます!」
梨 「いいチームになったな」
咲 「あの娘たちったら・・・私たちスタッフに光を当てようと一生懸命なんですよ」

咲子は笑いながら目を潤ませた。

咲 「スタッフが輝くためにも自分たちが輝かなきゃいけないんだって・・・」
梨 「いい娘たちだね」
咲 「あの娘たちは光なんてなくても自分でキラキラ輝いているのに」
梨 「それじゃまっちゃんは失業しちゃうな(笑)」
咲 「そうですね(笑)・・・あ、いつかの質問の答えなんですけど・・・」
梨 「いや、その答えはもうもらったよ」
咲 「え?」
梨 「素晴らしい照明だった。お前とはもうライヴァルだから気軽に声を掛けるなよ」
咲 「えーーー!?」

梨本がニヤニヤしながら席を立つと、咲子は慌ててその前に立ちふさがった。
その目にみるみると涙が溢れてくると、それを隠すかのように深々とお辞儀をした。
そのまましばらく嗚咽と闘っていたが、ついに下を向いたまま大きな声で言った。

「Perfumeさんをやらせていただいて、本当に、本当にありがとうございました!」

深々とお辞儀をする咲子の姿はまるであの3‌人のようだなと、梨本は目を細めるのだった。









**************************************************

今回は当ブログの読者であるへびわかさんからいただいた事実情報を基にしております。
そのため、より一層紛らわしくなっておりますが、この物語はいつも通り作者の激しい妄想です(笑)







関連記事

この記事のトラックバックURL

http://electrocat.blog113.fc2.com/tb.php/998-db729dce

コメント

新年 初泣!
伝え続けられると、妄想も真実になる

この記事を読んでいるとき、CMでスピッツの曲が流れてきた(本当)

そして、番組本編でもスピッツの曲が使われた(有吉ゼミ)

これは、真実として伝えていいと思う(T_T)
感謝
公開していただきありがとうございました。

あの話が全世界のPerfumeファンの方々の目に触れたことに、ドキドキしています。
長年スピッツ一筋だった私が、Perfumeのファンになり、今では体の右半分がスピッツ、
左半分がPerfumeとなってしまいました。
全てがPerfumeとなっていることも多いですが・・・。

私の世代より上の方は、スピッツという名前を聞いて「懐かしい」と思われる方、
「まだやってたんですか?」と思われる方、若い方だと「誰それ?」と思われる方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
Perfumeとは対極に位置しているかも分かりませんが、芯にあるものは同じなんですよね。

へそ曲がりで、くせのある音楽をあのようなスタイルで奏で続けているという絶滅危惧種的な
バンドですが、この日本で、まだ活動していますし、これからも続くと私は考えております。
もちろん、Perfumeも続きます。

読者の皆さん、もうナタリーさんにたどり着きましたでしょうか?


今回、このようなすばらしい作品に仕上げていただいた電脳猫さんに、あらためてお礼申し上げます。

ゆかちゃん記事(ゆかちゃん以外も)、いつも楽しみにしております。
コメントが長文になってしまうことが多いと思いますが、今後ともよろしくお願いします。
>セラミックおじさん
コメントありがとうございます^^

>伝え続けられると、妄想も真実になる

さすが伝説の妄想家!

>この記事を読んでいるとき、CMでスピッツの曲が流れてきた(本当)
>そして、番組本編でもスピッツの曲が使われた(有吉ゼミ)

まじしゃん!?
何かが憑いているのでしょうか((( ;゚Д゚))

>これは、真実として伝えていいと思う(T_T)

事実と真実は違いますもんね。
真実は読み取ることができるかもしれない・・・
それが妄想の始まりですね(^^)
今年もお互いに真実を読み取りましょう(^^)/
>へびわかさん
コメントありがとうございます^^

>あの話が全世界のPerfumeファンの方々の目に触れたことに、ドキドキしています。

へびわかさんからいただいた情報はできる限り事実を押さえて、足りない部分を妄想で補完されていました。
僕の妄想は元々へびわかさんとはアプローチが逆なんです。
事実のまったくないところに、それでも「Perfumeらしい」という妄想を作ります。
なので、元の情報からずいぶん妄想を膨らませてしまったことで気分を害されないか心配しておりました。
まずは受け入れていただいて安心しました(笑)

>Perfumeとは対極に位置しているかも分かりませんが、芯にあるものは同じなんですよね。

この部分は今回初めて知った部分です。
スピッツは『ロビンソン』で知り、その前後数年の曲はよく聞いていました。
その後も気になるバンドですがライヴには行ったことがありません。
今度行ってみようと思っています。
Perfumeと近い温かさを感じるために。

>今回、このようなすばらしい作品に仕上げていただいた電脳猫さんに、あらためてお礼申し上げます。

へびわかさんもぜひブログを始められたらいかがでしょうか(^^)

>ゆかちゃん記事(ゆかちゃん以外も)、いつも楽しみにしております。

あのようなものでよろしければいくらでも(笑)
これからもよろしくお願いいたします!
神も人間
なんと良い記事!妄想だけど、妄想じゃないといいなと思える心温まるお話で…( TДT)

スピッツも確かに軸のあるグループですよね。2度コンサートに行ったことがありますが、梨本氏の照明だったのでしょうか(o´〰`o)

ドームの最後のほうに乗っていたスタッフから見たPerfumeの印象を読むと、この話もあり得ると感じられます。演者がスタッフを大事にするからスタッフもその愛を返すよう仕事に励む、いいチームですよね( TДT)
繋がった・・
初泣きです。

Perfumeファンであると同時にスピッツファンである私にどストライク過ぎて。。

妄想とはいえ猫さんのおかげで大好きなアーティスト二つが
事実だけよりもさらに近づいて、もう感動です・・。

スピッツのライブDVDを観直すことにします。

小説家電脳猫にさらにファンになりました!
ありがとうございます!
>ぷなしめじさん
コメントありがとうございます^^

>なんと良い記事!妄想だけど、妄想じゃないといいなと思える心温まるお話で…( TДT)

こうだったと思えるのなら、そう思っていればいいのだと思います(笑)
きっと大きな違いはないはずですから・・・

>2度コンサートに行ったことがありますが、梨本氏の照明だったのでしょうか(o´〰`o)

そのはずですよ!

>演者がスタッフを大事にするからスタッフもその愛を返すよう仕事に励む、いいチームですよね( TДT)

そういうところがスピッツとPerfumeは似ているらしいのです。
Perfumeもスピッツのように長く活動してほしいですね(*^_^*)
>spacerさん
コメントありがとうございます^^
今年は年初からぺいちゃんと会話が多くて嬉しいです(*^_^*)

>Perfumeファンであると同時にスピッツファンである私にどストライク過ぎて。。

そうだったんですか!
じゃあ事前にぺいちゃんに取材すればよかったな~w

>大好きなアーティスト二つが事実だけよりもさらに近づいて、もう感動です・・。

スピッツとPerfumeの両方のファンの方って結構いらっしゃるような気がしてきました。
聞き込みしてみようかなw
それにしても、ぺいちゃんに喜んでもらえて嬉しいです。

>小説家電脳猫にさらにファンになりました!
>ありがとうございます!

こちらこそありがとうございます!
わたしも・・・
PTAとスピッツベルゲン、
両方のファンクラブに属している者です。
嬉しいやら、驚いたやら・・・
うれしくて、とっても久しぶりに 書き込みました  ヾ(*´∀`*)ノ
>はっさくさん
コメントありがとうございます^^

>PTAとスピッツベルゲン、両方のファンクラブに属している者です。

おおお!
そういう方、結構多いようですね(*^_^*)
やはりスピッツとPerfumeには相通ずるものがあるのでしょうね。

>嬉しいやら、驚いたやら・・・
>うれしくて、とっても久しぶりに 書き込みました  ヾ(*´∀`*)ノ

スピッツのファンに叱られないかドキドキしていましたので嬉しいです( ̄∀ ̄;)
ありがとうございます!
はつよろです♪
なんだかファンになっちゃいました(´ェ`*)

わたしですね…このところついてなくて(汗)
すべり台を滑っても滑ってもゴールが無い感じなんて言えば少しは伝わりますか?
ものすごい急降下中なんです。。

そんなこんなで色んなブログ読み漁ってたらここで足が止まりましたσ(゚ー^*)不思議と心惹かれたんです。
electrocatさんも色んな時間を過ごされてるんですよね。きっと。。

急なお願いで戸惑わせてしまうかもしれませんが
話し込んでみたいというか話しを聞いてもらえたらって気持ちを持たずにはいられなかったんです(´∀`*)

連絡してくれたら有難いです。
もしも迷惑であればコメントごと私のこと消してください。
>エスプリ★さん
コメントありがとうございます^^

>わたしですね…このところついてなくて(汗)
>すべり台を滑っても滑ってもゴールが無い感じなんて言えば少しは伝わりますか?
>ものすごい急降下中なんです。。

大丈夫ですか!?
そんな時期もありますよね。。
ここでよろしければ仲良くさせてください(^^)/

コメントする

管理者にだけ表示を許可する

 

Template Designed by めもらんだむ RSS
special thanks: Sky Ruins DW99 : aqua_3cpl Customized Version】